金曜, 22 3月 2013 13:54

未来に残してはならないもの・・②

社説②

◆どうしようもないもの
 政権の座に返り咲いた自民党こそ、福島原発の惨状を直視して、自らの原子力政策がどこで、どう間違ったのか、つぶさに検証すべきである。
 検証も反省もないままに、国民の多くが支持した「原発ゼロ」の上書きだけを急ぐのは、とても危険なことではないか。
 福島第一原発の解体作業を阻んでいるのは、水である。原子炉を冷やすのに一時間あたり約十五トンの冷水を注ぐ必要がある。このほかに毎日四百トンの地下水がどこからか流れ込んでくる。

 最新の浄化装置を使っても放射性物質を完全に取り除くことは不可能だ。敷地内を埋め尽くす巨大なタンクなどには、すでに二十七万トンもの汚染水がなすすべもなくたまっている。これだけを見ても「安全文化」などとはほど遠い。
 核のごみ、活断層、汚染水…。人間の今の力では、どうしようもないものばかりである。エネルギーとしての原子力は持続可能性が極めて低いという現実を、福島の惨事が思い知らせてくれたのだ。

 見方を変えれば原子力時代の終焉(しゅうえん)は、持続可能な社会への移行を図るチャンスに違いない。そのような進化を遂げれば、世界に範を示すことにもなる。

 オンカロを見学したあと、デンマーク南部のロラン島を訪れた。沖縄本島とほぼ同じ広さ、人口六万五千人の風の島では、至る所で個人所有の風車が回り、「エネルギー自給率500%の島」とも呼ばれている。
 デンマークは原発をやめて、自然エネルギーを選んだ国である。ロラン島では、かつて栄えた造船業が衰退したあと、前世紀の末、造船所の跡地に風力発電機のブレード(羽根)を造る工場を誘致したのが転機になった。

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